もう雰囲気よすぎるとしか言えない。

幻想人類覚悟のススメ
Coolier -クーリエ- http://www5d.biglobe.ne.jp/~coolier2/
東方創想話、作品集64
「じゃあ、幻想郷の人はみんな変なんじゃないかな。多分誰でも、僕と同じ状況に置かれたら同じことすると思うし」――僕

 東方はキャラ、音楽、ゲーム、全てが素晴らしい、なんてのはよく聞くが、なにより世界観が突出していると私は思う。
 人を喰う、人によく似た人より強い力を持った生き物との共存なんて、夢物語をどうどうと掲げている時点でどうかしている。これだけならたまに見かけるが、そんな喰うか食われるかの関係なのに殺伐とせず、むしろのほほんとした雰囲気を醸し出しているのにはもはや脱帽ものである。いやはや、神主殿はまっこと凄い御人であるなあ。
 内容の話に入るが、この作品。東方の既存キャラはほぼ*1 出てこない、いわゆるオリキャラのみで構成されたSSである。舞台こそ幻想郷だが、異変もなにも一切起こらない。一人の人間の少年と、一体の人喰い妖怪の少女の『幻想郷では』どこにでもあるようなお話である。そのくせ76kb越えしているのだから、作者様あんたどれだけこのテーマを書きたかったのかと。人を選ぶ(こればっかだな)のだが、オリキャラに拒否反応を示す方も是非読んでもらいたい。
 さきほども言ったが妖怪は人を喰うのだ。大結界後、無闇矢鱈に喰われることはなくなったものの、その力の差と長い寿命は健在である。では、そんな妖怪たちと離れることを選択しなかった幻想郷の人間たちは、果たして普通の人間と言えるのだろうか。
 一見するとただの美談、しかしよくよく考えれば静かに狂ってるとしか言えないような幻想人類を堪能すべし。幻想郷に住む人々が外から来る人間を『外来人』と呼ぶのは、住む場所の違いではなく、種族として同じではいられないほど精神が異なっているからではないだろうか。
 これぞ幻想郷。私がなんとなく思い浮かべていた、曖昧だった幻想郷のイメージを、はっきり明確にしてくれた傑作である。

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*1 既存キャラは名前だけが一人。それらしい存在が一体のみ。あと、少女はルーミアじゃないです。
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