悲恋物ではない。ロミジュリは大嫌いだ。

これがわたしの旦那さま
小説家になろう http://syosetu.com/
オリジナル小説。
その心には決して触れてはならない。
けれど動きだせば触れてしまいそうになる。
お願い。動き出さないで。――シュエラ(地文)
 
 王妃はいても子どものいない王様(美形)のもとに、主人公の貴族の少女が愛妾になるお話。
 主人公が貴族と言う割にはらしくない、権力欲のかけらもない性格だったり、王様は王族のくせに腹心がやたらフランクで若かったり、何故か主人公が来てからトントン拍子で問題が片付いていったりと、なろうによくある、さしたる取りえも無いのにやたら評価されて玉の輿に乗る、作者の願望丸出しの話、の皮を被った身分違いの恋の難しさを描いた苦難とすれ違いの話。
 上記の地雷っぽさもそこらにばら撒かれているのだが、そんなこたあどーでもいいのだ。
 もうね、いじらしいの。切ないの。見ててやきもきするの。お互い好きあってるのにどうしても言葉に出来ない。
 どっちからでもいいから一言俺についてこい、ないし貴方を愛していますと言ってやれば解決する問題なのに、それが立場の重さを背負わせたくないという願いや、本当に愛されているのか分からない不安で口を閉ざしてしまうのを見てて、何度身悶えしたことか(実話)。*1 だがそれが出来ないから苦労してるんだぜ?
 しかも基本的には一夫多妻は認められていない国なので、仕方ない理由があったにせよ主人公に対する風当たりは厳しい厳しい。その上主人公は愛妾、言ってしまえば本妻が駄目だったために急遽用意されたスペアなわけで、立場も不安定だし、彼女自身の身分も高くない。
 だが、それらを乗り越えて二人がお互いの気持ちを確かめ合ったときのカタルシスは半端ないものがあった。
 最初の数話で切るのはもったいない、と思った作品でした。いやほんと、なろうにはたまーに光るものが埋まってますなあ……。
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 *1 主人公が心労で倒れ、療養のために故郷へ一旦戻ることになったときの二人の心情。
   主人公→やっぱり私は必要ないということなんだろうか。出来るなら王様の隣に戻りたいけど、政治的な問題で私を置いておくことが難しくなったのかもしれない。悲しいけれど、私が故郷で暮らしたほうが彼のためなのかもしれない。
   王様→返したくは無いが、彼女の体を考えると戻さざるを得ない。だが、彼女のことを考えるとこんなどろどろした王宮に住まわせ、王族の責務を被せるよりも、故郷で暮らしたほうが良いかもしれない。ならば、二度と帰ってこないことになろうとも、故郷へ戻してあげるべきだろう。
   ……なんというすれ違い。

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